【怪奇小説】ウンコキラー〜お尻の穴が裂けちゃう〜
〜お尻の穴が裂けちゃう〜
「きゃあああああああああああああああああっ」
見ると死にかけ老人こと大山田統一郎が、キャリーこと小杉浩子に襲いかかっていた。
「大山田さんッ! なにをするんですかッ! 警察を呼びますよッ!」
キャリーが大声を上げる。
「うほほほーいッ!」
年寄りのくせに身軽な死にかけ老人。猿のように左右に軽快にジャンプをしている。いつもの緩慢な動きからは、信じられない速さだ。
珍保長太郎はウンコキラーが誰なのか、今わかった。こいつ、ボケ老人のふりをしていたのかッ!
「だめです。やめてください。暑くて眠れないから公園に連れて行け、というから来たのに」
「がうがうがう」
死にかけ老人は、キャリーのまわりをぐるぐる回りながら、ときどき噛みついていた。発情して興奮しているらしい。
最初はただのボケたお年寄りの変な行動と思っていたキャリーだが、その噛む力が、だんだんと情け容赦なくなり、飛びかかられるたびに小さな肉片を食いちぎられるようになると、恐ろしさが噴き出してきた。大山田は異常だった。
「キキーッ! キキーッ!」
歓喜の声を上げながら、口元から血を滴らせている死にかけ老人。
「痛い痛いッ!」
キャリーは絶叫する。老人の歯が骨まで達したのである。
「カプッカプッ! チューッチューッ!」
なんと、死にかけ老人は、キャリーの身体中にできた細かい傷口に噛み付いては、血をすすっていた。吸血鬼というよりは吸血コウモリに近い。
恍惚をした目つき。恍惚老人の恍惚とは違う、ギラギラした、いやらしい目の色をしていた。
ドサッ!
貧血と心労から気を失いかけて、キャリーは倒れた。その顔面にむけて小さなお尻を突き出す死にかけ老人。
ペロンッ!
パジャマのズボンを下げて不潔な臀部を出した。
「汚くて臭いケツ!」
老人は自己申告した。まさにその通りで、トイレのあとで紙でちゃんと吹いていないらしく、肛門のまわりにウンコが付着していた。
「ウウ〜ンッ!」
モリモリモリッ! とウンコを出し始める死にかけ老人。汚い。アナルをウンコが通る快感でイキそうな顔をしている。おそらく、高齢でチンポコが生殖器としての機能を果たさなくなった代わりに、肛門とウンコがその代用品となって、ゆがんだ変態的な発達をとげたのではないか?
「ヤリのようにまっすぐで硬いウンコが出てきた……。これか……これがウンコキラーの武器か」
茂みの陰で珍保長太郎は驚いていた。
「硬くてカチンカチンッ! フル勃起ッ!」
ウンコでできたヤリを振りかざして、自慢げに歓喜の雄叫びをあげる狂った老人。
「大山田さん……。それは勃起とは言いません。便秘のウンコです」
こんな時だったが、気になったのでキャリーは相手の間違いを正した。もちろん、常軌を逸した老人の耳には届かなかった。
「これでセックスする……」
「ゲッ!」
老人があまりにも最悪なことを言いだしたので、キャリーは思わず驚きの声を上げた。
「ウンコセックスッ!」
ジャングルにいる野獣の咆哮を思わせるような老人の大声に、キャリーはびくっとした。この小柄な老人の身体のどこから、こんな大音量が出てくるのか……。不用品回収車のホーン型スピーカーのようだった。
ブンッ!
死にかけ老人は元気良くヤリのように尖ったウンコを、キャリーの股間めがけて突き出した。
「こりゃいかんッ!」
珍保長太郎はいそいでスケスケ下着を身につけているバカを持ち上げて、死にかけ老人のウンコのヤリの前に放り投げた。
グサリッ!
「ぐはああああああああああああッ!」
あまりの痛さに冥府をさまよっていたバカの魂が地上に戻った。バカが目を開けると先の尖った鋭利なウンコが自分の腹に突き刺さっているのが見えた。
「なんじゃこりゃーッ! 硬くて臭いッ! 硬くて臭いッ!」
バカが驚くのも無理はない話である。イエローストーン国立公園の間欠泉のように、腹から血が景気よく吹き出した。
ドバドバドバドバドバドバドバドバドバドバドバドバッ!
「ちいっ」
死にかけ老人は悔しそうに舌打ちをすると、半裸の女装男を人間の盾として、放り投げてきた怪力男を見た。
「お前は確か、代田橋の不味いラーメン屋の……」
「どうやら、頭は少しもボケていないようだな」
ユラリ。
珍保長太郎は隠れていた茂みを出て、死にかけ老人の前に出た。
「グフフフフッ。無力なボケ老人を殺人鬼などと思う奴はいないからな。ちょうどよい隠れ蓑になったよ」
死にかけ老人の小さな目が光った。しなびた猿の干物のような風体だが、目の光はその下にある高度で邪悪な知性の存在を示していた。
「犯行の現場に凶悪な介護士のリボンを置いてくるのは良い手だったな。あの女はいかにも変態性欲による連続殺人を起こしてもおかしくないタイプだ。あやうく、騙されてしまったよ」
「あれに気がついてくれた奴がいたとは、うれしいのう。ちょっとした冗談だったのだが……。何件も連続殺人を犯していると、遊びを入れたくなってくるのじゃ」
ニヤリと笑う死にかけ老人。二人の殺人鬼の目が合った。同じ人殺しなので、珍保長太郎は死にかけ老人の心の中が手に取るようにわかった。
「だが、その殺人も今日が最後だ」
「な……なにッ!?」
「次はお前が被害者になる番だッ!」
珍保長太郎はニヤニヤ笑いながら、かわいそうな老人に飛びかかった。相手はシリアルキラーとはいえ、80を越えた小柄なお年寄りである。一方、珍保長太郎は運動不足気味だが2mに近い怪力の持ち主。楽勝である。
珍保長太郎は、せっかくだから時間をかけてゆっくりと殺してやろうと思った。あえて即死はさせず、生きたまま手足を一本ずつ抜いていくのはどうだろうか。
ところが……。
「痛てててててッ!」
悲鳴をあげたのは珍保長太郎の方だった。死にかけ老人はチンパンジーのようにジャンプすると一瞬で珍保長太郎の視界から消えた。オロオロしていると背後に現れて、珍保長太郎の腕を取ってひねり上げた。ねじる。
カルシウム不足の珍保長太郎の腕の関節が、ミシミシと嫌な音を立てる。捕まえようとすると、またすばやく消えた。
ヒュン! ヒュン!
「猿のようにすばやいッ! これではまったく捕まえられんッ! くそっ、捕まえることさえできたら、こっちのものなのだが……」
珍保長太郎は怪力には自信があった。その油断が命取りになった。
ガシッ!
「えッ?」
逆に死にかけ老人の方から珍保長太郎に組み合ってきた。首相撲。レスリングでいうロックアップの体勢である。死にかけ老人の手が、珍保長太郎の腰を掴む。
「見た目と違ってものすごく力が強いッ?」
死にかけ老人は珍保長太郎の巨体をふんわりと持ち上げた。次の瞬間、珍保長太郎は、いとも簡単に硬い地面に頭から叩きつけられていた。
ゴロンゴロンゴロンッ!
2m近い大男が面白いように何度も投げられては転がっていく。
「グフフフッ。こう見えても、わしは若い頃はグレコローマンの国体選手だったのだ」
「くっ、くそっ!」
ただの脳みそがない大男なだけの珍保長太郎は、プロの技術の前には手も足も出なかった。
ゴロン! コロコロ!
立っては投げられ、立って投げられ。しまいには立つのがいやになって座っていたら、その体勢のまま腰のベルトを掴まれてゴボウ抜きに投げられた。こんな投げ方ができる人間は、ロシアのカレリンくらいしかいない。
ガッ! ドカッ! バキッ!
珍保長太郎は何度も顔面や後頭部を硬い地面や樹木に打ち付けられた。そのうちに、どこかの変な神経が切れたようで、あまり目が見えなくなってきた。涙で見えなくなったのかもしれない……。
「痛い痛い……。悲しい悲しい……」
うおおおおおおおおおおん。うおおおおおおおおおおおおん。
死にかけた珍保長太郎は男泣きに泣いた。本当に痛かったのである。
「フィニーッシュ!」
まったく死にかけてない死にかけ老人は、今やあまり動かなくなった珍保長太郎を裏返して、犬のように屈辱的な四つん這いにさせた。それから、ズボンとブリーフを下げて肛門をむき出しにした。
げげーッ! こいつ、ホモの気もあったのかーッ!
珍保長太郎は絶望的な気分で考えたが、もはや、あらがう力は残っていなかった。あとはおとなしく肛門を犯されウンコを食わされて死ぬのみ……。
「ウンコセックス!」
死にかけ老人は、そばで倒れていたバカの身体に突き刺さっていたヤリのような硬いウンコを引き抜いた。抜くときにバカが痙攣したので、まだ死んではいないようだ。
硬いヤリのようなウンコを構える死にかけ老人。それから、一気に珍保長太郎の肛門にそれを突き立てた。
ズブッ! ズブッ! ズブッ! ズブッ!
いやな音を立てて、ウンコが肛門にめり込んでいく。裂けて血が出た。ちょうど良い潤滑液だ。
「ぎゃあああああああああああああああッ」
とうぜんながら悲鳴をあげる珍保長太郎。初めてだから仕方がない。
「グフフフフッ」
「痛い痛いッ! お尻の穴が裂けちゃうッ! これ以上……もう、やめてください。お願いです」
苦しみのあまり、人間の尊厳を捨てて、泣いて哀願する珍保長太郎。ここまでプライドを失ってしまったら、もう人間には戻れない。
「実のところ、もうすっかり肛門は裂けておるぞッ!」
冷静に事実を告げる死にかけ老人。今までは肛門は後ろ側なので目に見えないことが幸いしていたが、老人に言われて、自分の肛門が裂けている姿が写真のようにクッキリと珍保長太郎の脳裏に浮かんでしまった。その瞬間、苦痛が100倍にも増したことは間違いない。
「あひ〜ん! あひ〜ん! 痛いですぅ痛いですぅ」
珍保長太郎のような大男には、このように一方的にやられることは、人生においてかつてない体験だった。おかげであっさり心が折れてしまったらしい。人目をはばからず、しくしくと泣いている。
一方、出血で気が遠くなっていたバカは、店長の泣き声で目を覚ましていた。バカが目にした光景は衝撃的なものだった。
「店長って本性はこんななさけない男だったのか……」
犬のように犯されてる店長を見て、バカは心の底から軽蔑した。
「ウジムシ。ウジムシ。女が腐ったようなウジムシめ……」
グリグリッ! ギューッ!ギューッ!
「くそ。なかなか奥まで入らないわい。この男、便秘なのだろうか。」
死にかけ老人は、情け容赦なく硬いウンコを肛門に押し込んだ。高齢とはいえ、国体レベルの鍛え抜かれたレスラーの怪力である。
ムリムリムリムリッ!
いやな音を立ててウンコが肛門に奥に入って行く。
「痛いッ! 痛いッ! グガボボボボボボッ!」
もう声にならない声をあげるしかない珍保長太郎。
今、どういう状況かというと、何週間もたまって岩のように硬くなっている珍保長太郎のウンコが、外から入ってくる死にかけ老人のウンコを阻止しているところである。だが、珍保長太郎のウンコのがんばりもかいなく、肛門から入って来た死にかけ老人のウンコは、どんどん先住のウンコを上の方に突き上げていた。腸から胃袋、食道のほうにまで、先住のウンコは押し出されていった。
痛いどころではない。これには人類がかつて経験したことがないような苦痛と同時に不快感がともなっていた。ついでに少し快感もあったのは秘められた事実だ。
「ギャーッ! あたしのお腹の中をウンコがッ! ギャーッ! あたしのお腹の中をウンコがッ!」
なんで急に女言葉になるのかがわからないが、珍保長太郎は悲鳴を上げ続けた。肛門を犯されているのだから、目覚めても仕方がないかもしれない。
「そうれッ! 1、2、ウンコッ! そうれッ! 1、2、ウンコッ!」
掛け声をかけて元気にウンコを押し込む死にかけ老人。たいへんに張り切っている。この老人にとっては、これが人生の生きがいなのだろう。
「グボホコッ! グボホコッ!」
とうとうウンコの先っぽが珍保長太郎の口から出てきた。
「自分のウンコが口から出てきたーッ! 自分のウンコが口から出てきたーッ!」
珍保長太郎は、もうどうしたら良いかわからず、現状そのままのことを叫ぶしかなかった。
「そうれッ! ウンコで串刺しッ! そうれッ! ウンコで串刺しッ! あまり見たことがないウンコ焼き鳥じゃーっ!」
死にかけ老人が叫ぶ。ウンコ焼き鳥という表現はいろいろ間違ってる気がするが、珍保長太郎はそれを気にする段階はとっくに過ぎていた。人間の限界を越えて数キロ先まで行ってしまった。こんな体験はけっしてしたくないものである。
ゴポポポポポッ! ゴポポポポポッ! ゴポポポポポッ!
ウンコと血とゲロが混ざったものが、とうとう口から出てきた。その衝撃と屈辱で、痙攣を繰り返す珍保長太郎。
ピク……ピク……ピク……。
「こいつ……もうすぐ死ぬな」
死にかけ老人は勝利を確信した。その時である。
「自分のウンコ引っこ抜きッ!」
珍保長太郎は、いまだかつて人類が口にしたことはないであろう言葉を発した。その姿はまるで神のように神々しく光を放っているように見えた。おそらくそれは気分的にそんな風に見えた、というだけの幻想であろう。
ネオンサインのようにビカビカと光を放ちながら、珍保長太郎は意味のない言葉を絶叫した。
「ウンコッコ!」
それから、恐ろしいことが起きた。おお……、神よ。珍保長太郎は口から先が出ている自分をウンコを掴んで、一気に引き抜いたのであるッ!
ズボボボボボボボッ!
それがどんな音がしたかは、正確にはわからない。人類史上誰も聞いたことがない音だからである。
ところで、お腹の中でぐねぐね曲がった状態で岩のように硬くなっているウンコを一気に引き抜くと、どうなるか。もちろん、内臓……大腸、小腸、盲腸、胃袋、さらには食道までもが、ずたずたに裂けるに違いない。
珍保長太郎にはそれがわかっていた。だから、ゆっくりやると絶対に痛いと思ったので、光の速さで全力で引き抜いたのである。
「グコボコボコッ!」
擬音ではない。珍保長太郎の叫びの声である。魂の声。もう人類の限界を越えて向こう側に行ってしまった……ということだ。今ではキリストが同僚だ、
さすがの死にかけ老人も目を丸くして見つめるしかなかった。彼はミスを犯していた。珍保長太郎のウンコというフタがなくなって、死にかけ老人のウンコはぜんぶ珍保長太郎の体内に入ってしまったのである。
死にかけ老人は武器を失った。
ゆらりとカゲロウのように揺れる珍保長太郎。その手には血や胃の内容物にまみれた自分の腸の形をしたウンコが握られていたッ!
それから、ゆっくりと、引っこ抜いた自分のウンコを頭上高くかまえた。
「目玉ウンコッ!」
これまた、聞いたことも言葉を絶叫すると、珍保長太郎は自分のウンコの先を、死にかけ老人の目玉に突き刺した。
ザクッ!
「ぎゃああああああああああああああああああッ!」
死にかけ老人は火災報知器のような大音量で悲鳴をあげた。あだ名の通りに死にかけていたのである。目玉が飛び出てブランブランとアメリカン・クラッカーのように揺れていた。
グイッ!
ひねりを入れて、珍保長太郎はさらに眼孔の奥までウンコを押し込んだ。ウンコの先端は脳みその中に半分くらい入っていた。
死にかけ老人はもう死にかけではなくなった。
〜代田橋に吹く風〜
ラーメン珍長。
開店前にキャリーこと小杉浩子が、珍保長太郎を訪ねてきた。キャリーは腐敗した豚の脂と血でべとべとになった店内を見て顔をしかめた。
「汚い……」
キャリーは潔癖性だった。
「確かに関東一清潔だとは言いがたいことは確かだ」
珍保長太郎は力強く答えた。
「いつも出前だったので店に来たのは初めてですが、これは好きになれそうにありません」
「うーむ」
答えようがないので珍保長太郎はうなった。
キャリーの証言でウンコキラーの正体は死にかけ老人こと大山田統一郎だとわかった。珍保長太郎の疑いは晴れた。だが、こんどは大山田老の目玉にウンコを突き刺して殺したのは誰か? ということが問題になった。
キャリーはこの部分は気絶して見ていなかった、と警察には証言していた。
刑事青赤は、北沢警察署をゆうゆうと出て行く珍保長太郎を悔しそうに睨みつけた。
ミザリーこと神保千穂の死体が出てくると、話はまた違ってきそうだが、現時点では神保千穂は、ウンコキラーがらみの消息不明案件とされていた。おそらく、死体はいまごろ玉川上水のアカミミガメと鯉の胃の中であろう。
「命を助けてくれてありがとうございます。あなたに言われた通りに警察には話しましたが、これで良かったかしら?」
「たいへんにけっこうです。なにしろ、私は警察とは相性がよくありませんからね。疑われてきびしく追求をされると、いくらでもボロが出てくるこの身。本当なら15回くらいは死刑になってもおかしくはありません。猫ではないのでそれでは死んでしまいます」
「それにしてもラーメン屋が殺人鬼だなんて……。にわかには信じられません」
キャリーは困惑した顔で店長を見た。
「人間の心というものは奥が深いものです」
わかったようなわからないことをつぶやく珍保長太郎。おそらく、とくに意味は考えないで言ってると思われる。
「ああ〜」
よだれをだらだらと垂れ流しながら、バカがうつろな目で奇声をあげる。公園で女装していた男だ。服装を見るとここの店員のようだが目つきがおかしい。キャリーはおびえてあとずさった。
「彼はどうしたんですか?」
「これは店員のバカです。心労が重なり、とうとう人格が崩壊してしまったのです。変な声をあげて店内をうろうろするだけなので、毎回、帰すのですが、それでも毎朝、出勤してくるのです。おそらく、心の中では、なにかがループしているのでしょう」
珍保長太郎は神妙に答えた。
「ウンコキラーにウンコで刺されてしまった女装の人ですね。そのショックで立ち直れなくなってしまったんでしょうか? そういう意味ではこの方もウンコキラーの犠牲者の一人ですね……」
キャリーは介護士なのでかわいそうな人間には同情的だ。
「もちろん、そうですッ! その通りですッ! かわいそうなバカくんッ!」
珍保長太郎の答えは性急すぎて、かつ強調が多すぎた。
キャリーはしばらくの間、疑いの目で珍保長太郎を見ていたが、けっきょく、なにも言わないことにした。
「ほげほげ〜」
バカは冥府をさまよっていた。
キャリーは帰っていった。いちおう、お礼のつもりでラーメンでも食うつもりだったが、店内を見て食欲をなくしたのでやめた。二度とここに出前を頼むのはやめようと、心に誓った。
代田橋商店街の道路を去っていく若い介護士を見送る珍保長太郎。ほこりっぽい風が吹いて、彼女のスカートの裾がひるがえった。夏の空気に秋の気配が感じられるようになった。
「今日もいい天気だ」
珍保長太郎は蛇のように笑って店内に引き返した。それからバカを蹴り出して、開店の準備を始めた。
完
あらすじ
代田橋でウンコを口に詰めて殺す『ウンコキラー』による連続殺人が起きていた。犯人だと疑われたラーメン屋店主、珍保長太郎は真犯人を見つけるべく、孤独な戦いを始めた!
登場人物
珍保長太郎 :『ラーメン珍長』店主
バカ :新実大介
刑事青赤:
刑事青、青田剛
刑事赤、赤井達也
ミザリー、神保千穂
キャリー、小杉浩子
死にかけ老人、大山田統一郎