【怪奇小説】ウンコキラー〜ザ・フィッシング〜
〜ザ・フィッシング〜
日が暮れた。
「うがあ……」
バカは無気力になっていた。脳みその一部を摘出したロボトミー患者のように、うつろな存在になった。心が壊れてしまったのである。
珍保長太郎は、そのバカの服を脱がせて、素っ裸にした。ホモっ気はないので少しも興奮はしない。
それから、業務用自転車『チンポコ号』で環状七号線沿いのドン・キホーテに行って、適当なセクシーランジェリーと化粧品を買ってきた。バカにそれを着せて化粧をした。
バカは人形のようなうつろな目で珍保長太郎のやることを見つめていた。からっぽの世界だ。少しも抵抗するそぶりは見せない。今なら、さりげなく腹の肉を引き裂いで、ぬるぬるした内臓を引きずり出しても、だまってやられていることだろう。
それもちょっと試してみたかったが、初志貫徹。余計な娯楽はやらないことにした。
「いいかバカ。お前は餌だッ!」
夜がふけてから、珍保長太郎はバカを羽根木公園に連れ出した。なるべく、ひとけのなさそうな場所を探して、手首を縛って地面に座らせた。
「動いたら殺す。お前はウンコキラーに女と間違われて襲われて、むざんにもウンコを食わされて死ぬのだ。死んだのを見計らってから、俺がウンコキラーを市民逮捕する。めでたし、めでたし。どうだ、完成度の高い計画だろう」
自画自賛をする珍保長太郎。
「うぐう……」
バカは死んだような目でうなった。もう半分死んでいるのも同じことである。
もし、ウンコキラーが現れなかったら、自分の手で殺してウンコキラーの犯行に見せかけるのもいいな、と珍保長太郎は思った。
「楽しみ楽しみ」
「むがあ」
なぜかニヤニヤと笑いだした店長を見て、バカは機械的にうなった。心の中には何もない。
近くの茂みに隠れて、珍保長太郎は半裸のバカの様子を見ていた。露出狂の女というよりは、やはり、ただの女装した変態にしか見えんな……。この作戦、ちょっとばかりアラがあったかもしれん。
珍保長太郎は眉間にしわを寄せた。生きることのつらさを感じた。そのうえ、極度の便秘状態で、お腹がまた痛くなってきた。ふんだりけったりである。
この調子だと、便秘で死ぬかもしれない……、などを考えていたら、茂みの後ろの方から悲鳴が聞こえた。
あらすじ
代田橋でウンコを口に詰めて殺す『ウンコキラー』による連続殺人が起きていた。犯人だと疑われたラーメン屋店主、珍保長太郎は真犯人を見つけるべく、孤独な戦いを始めた!
登場人物
珍保長太郎 :『ラーメン珍長』店主
バカ :新実大介
刑事青赤:
刑事青、青田剛
刑事赤、赤井達也
ミザリー、神保千穂
キャリー、小杉浩子
死にかけ老人、大山田統一郎