死骨 イントロ

12月 21, 2021

 どこからか石のようなものが飛んできた。銃をかまえた北朝鮮の女に当たる。女は反射的に海のほうに目をやる。注意がそれた……
「今だ!」
 安藤正義は女に飛びかかり、銃の奪いあいになった。
「あっ!」
 見ると土屋びわもライフルをもった兵士と、もみあいになっている。安藤もびわも高校では運動部員なので、おたがいに腕力には自信がある。女の拳銃が暴発する。
「ぎゃっ」
 土屋びわが倒れる……安藤正義の時間が凍りついた。

「いますぐ包丁を捨てなさい!」
 安藤正義は左翼青年に警告した。青年の目が血走っている。シャブでもキメてるのだろうか? いや、キメているのは過激思想だ。追いつめられて、冷静さを失っているのだろう。〈警察官から拳銃をうばい革命をおこす〉という意味のことを、もうろうと口走っている。
 安藤正義はためらったのちに、青年に向けて銃を放った。
 白い光。
 白い熱。

「うわっ」
 安藤正義は粗末な独身者向けのマンションで飛びおきた。頭をかかえる。
「……また、この夢だ」
 夢の中なので時空を超越している。さいしょは、高校時代。次は三十年後、先月の話だ。夢の中では時間も空間も関係がない。自分専用のタイムマシーンをもっているようなものだ。瞬間移動装置でもある。しかしなんといやなタイムマシーンだろう。いずれも二度と思い出したくない出来事ばかり。何回も、何回も……繰り返して、再生される。ここは地獄か? これが無間地獄というものか?
「胸が張り裂けそうだ……」
 安藤正義は、朝から酒が飲みたくてたまらなくなった。

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