【怪奇小説】青虫ラーメン〜俺が正義だ〜

〜俺が正義だ〜
神々も自殺するような陰気な夜。尿が近い珍保長太郎は、いつものように数時間寝たところで、尿意で目が覚めてトイレに向かった。
「今日も一人も客が来なかった……。金がない。まことに、金がないことである」
珍保長太郎は、おしっこをしながら、わなわな震えていた。むだに長いチンポの先も揺れるので、ねらいがはずれ小便が足にかかる。
「まったく、むしゃくしゃする。大暴れして世間のやつらをあっと言わせてやりたい。俺はこんなに不幸なのだから、世間の人間は、もっと不幸になって良いはずだ。つまり、俺には復讐する権利があるということだ。ああ、あるとも。俺はかわいそうなマイノリティだ。だがサイレントではすませないぞ」
いつのまにか、ヤクザ悪左衛門への怒りが、世間全般の怒りにまで昇華している珍保長太郎。目つきがあぶない。もし、心の中を読める警察官が散歩をしている珍保長太郎を見かけたら、どんなに無力で善良そうに見えても、即座に射殺すべきである。予防的な死刑である。珍保長太郎になら、適用しても、最高裁裁判長の心証は悪くないのではないか。
「ちょいと駅前に出かけて、包丁で罪のない通行人を二、三人刺したら、かなりすっきりすると思うんだがな」
だんだんと秋葉原通り魔事件の加藤智大のようなことを言い出す珍保長太郎。
「俺が正義だ。被害者だからなにをしても良いと思う。間違いない。うんうん」
トイレでおしっこしながら、うなづく狂人。
じょーーー。
じょーーーー。
じょぼじょぼ。
ぼじょぼじょぼじょじょ。
おしっこが便器に当たる音が変化した。珍保長太郎が下を見ると、そこには豚野餌吉の顔が……。
「うわあああああっ。気持ち悪い」
「おかしくなっていないで〜はやく復讐をしろ〜。そもそも、本橋さんをあんな目にあわされてなにも感じないのか〜。この非人間め〜」
うらめしそうな顔で便器の中から睨みつける豚野餌吉。嫌なシチュエーションである。もし、ウンコをしていたら尻の穴を舐められていたのではないか。そう思うと、珍保長太郎は全身から鳥肌が立った。やはり、デブにはゲイが多い。豚野餌吉ならぜったいに女のはもてないので、ありあまる性欲を男性に向けて満たそうとしてもおかしくはない。
「うわお。とうとう現実世界にまで登場するようになったか」
「うらめしい〜。にくい〜にくい〜」
「憎むんならヤクザ悪左衛門の方だと思うが」
珍保長太郎が幽霊に向かってあんがい正しいことを言う。
「論理的にはそうだが、どうも、お前の方がにくくてたまらない〜。そもそも、ラーメン珍長で殺されたんだから、現場責任者は店長だあ〜。殺されるような運命の店を作る方が悪い〜」
「うおっ。やはり幽霊だから論理が通用しない!」
珍保長太郎は便器の中に絶叫した。自分も論理が通用しない方なのはわかってるが、幽霊の通じなさは別格なものがある。
「にくい〜にくい〜」
ずるずると便器の中から、這いずって出てくる豚野餌吉の頭。たまにゲテモノ料理系の中華料理屋なんかで、客を驚かせるために、豚の頭がごろんと飾られていることがある。あれみたいに見えた。小便にまみれたぶさいくなデブの顔が迫ってくる。便所の扉に追いつめられる珍保長太郎。立っていられなくなり、インド人のようにしゃがみこむ。
「うわあ! ごめんなさい、ごめんなさい! もうしません」
とりあえず謝る珍保長太郎。なんに対して謝っているのか。おそらくその場しのぎでなにも考えてないで言ってるだけにちがいない。心の底からひきょうな人間である。
「しませんじゃなくて〜しろ。復讐をしろ〜」
「します! します! 大急ぎでぜんりょくで平身低頭でおこないます!」
恐ろしさのあまり小便をちびる珍保長太郎。おしっこが豚野餌吉の顔にかかる。
ごくん。
ごくん。
おいしそうにおしっこを飲む豚野餌吉の霊。健康に良いのかもしれない。おしっこを飲まれるだけなら、まだましだった。最悪なのはここからだった……。さらなるおしっこをもとめて、豚野餌吉は小便を飲みながら源流に近づいて来た。珍保長太郎は小便の量が多い方ではあるが、それでも無限で出続けるわけではなかった。
ちょろ…。
ちょろり……。
とうとうおしっこの尽きる時が来た。小便を飲み足りない豚野餌吉の頭の霊は、珍保長太郎のチンポをくわせて吸った。チンポが長いからくわえやすいのである。
「ぎゃああああああああああああああっ!」
これ以上の地獄がこの世にあろうか。珍保長太郎は口と鼻の穴から同時にゲロを吹き出しながら気絶した。豚野餌吉の口の中はあの世にように冷たかった。しかも、嫌なことに少し勃起してしまったことに気付いて珍保長太郎は、薄れ行く意識の中でこのまま死にたくなった。


あらすじ
代田橋でまずいラーメン屋を営んでいる珍保長太郎。来店した地元の暴力団員と喧嘩になり、居合わせた客のひとりが死亡、珍保長太郎も重傷を負う。指名手配された暴力団員は、逆恨みして、珍保長太郎の女友達をシャブ漬けにして廃人にしてしまう。怒りに燃えた珍保長太郎の孤独な復讐が始まる!
登場人物
珍保長太郎 :『ラーメン珍長』店主
豚野餌吉 : 客
オッパイデカ子 : 謎の女
ヤクザ悪左衛門 : 暴力団
糞賀臭男 : 暴力団
歯糞全身男 : 暴力団
死神酋長:医者


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今から40億年前。ペルセウス人たちの宇宙船が故障し地球に不時着した。ペルセウス人は夢と現実のあいだを行き来する不思議な文明を築いていた。彼らは「感情波」と呼ばれる「人間」の感情の動きをエネルギー化して利用していた。そのバッテリーがゼロになってしまったのだ。

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ホラー漫画家、神田森莉の長編SF小説。

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人の良いくまちゃんが世知辛い世間に翻弄されてダメになっていく姿を描きます。しっかりしてください。


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