【怪奇小説】ヒトデ男の恐怖~地獄の底で笑ってるやつは誰だ~

~地獄の底で笑ってるやつは誰だ~
大家の家の二階で、デブとキチガイは、すっかり絶望的な心持ちになっていた。
前日の夜。ヒトデ男がなにかを引きずって部屋に入ってきた。見ると派手な服装をした水商売風の女の身体だ。新しい犠牲者らしい。ヒトデ男は口にボールのようなものをくわえていた。ペッとそれを吐き出す。ゴロンゴロンと、拘束されて動けないデブとキチガイの近くに転がってきた。女の生首だった。
「ギャアアアアアアアアアアッ!」
「ギェエエエエエエエエエエエッ!」
悲鳴をあげる小学生たちを見て、ヒトデ男は満足そうに、たくさんある手をピラピラと震わせながら出て行った。少しはなれたところにいる、元プロレスラーの三船龍太郎は、ピクリとも動かない。半分、死にかけているのだ。息はしてるのだろうか。
翌朝、二人は非常食を食った。家が小金持ちであるデブが探検のためにリックに詰め込んでいたサバイバルグッズに入っていた。これが非常に助かった。水と乾パン、よくわからないレトルトに入った宇宙食のようなものなど。まずいが、これがなかったら、今頃、死んでいただろう。
「うう~ん」
三船がうめいた。まだ生きていたようだ。子供たちがおやつのチョコレートにとりかかったところだった。そういえば、このおじさんはなにを食っているのだろうか。話を聞くと十日間以上、ここにいるようだが。
「おじさん、チョコを食べるかい?」
デブが聞いた。デブはチョコレートが大好きだ。
「く……くれ」
ひもじそうに三船が答える。やはり、飢餓状態だったらしい。デブが放り投げたチョコをむさぼるように食う異形の大男。白い骨がところどころ見えているという、生きているのが信じられないような上半身を起こす。これ以上の動きはヒトデ男が出した蜘蛛の糸のようなもので、からみとられているのでできない。
ボトボトボト。
三船の下に茶色い液がたまる。
「こ、これは……」
ふたりは目を丸くして見つめる。三船は胃袋をすでに食われていたのだ。食べたチョコは食道からそのまま出てきていた。
「よく生きているなあ……」
ふたりは元プロレスラーの異常な体力に感心をしていた。三船は壮絶なデスマッチを戦い続けていた。
しばらくして、またヒトデ男が現れた。今度は隣の部屋に、三船を引きずって行った。三船は大男だが、ヒトデ男は五人の身体が繋がっているので、五人ぶんの馬力がある。ドアの向こうでなにか肉を食いちぎるような音が聞こえた。
「ぐわあああああああああああああああああッ!」
三船の絶叫がなんども聞こえる。骨の見えている死にかけの肉体のどこから出るのか?と思うほどの大声だ。肉を殴る音も聞こえる。かろうじて、抵抗もしているらしい。最後の戦いだ。
「聞こえなくなった……」
ふたりは耳をすました。まだ、かすかな生命の兆候でも聞こえないだろうか……。なにも聞こえない。聞こえるのはヒトデ男が骨を噛み砕き、肉を食いちぎる、忌まわしい音だけ。
デブとキチガイは目を見合わせた。
「俺たちも、もうすぐだ……」
覚悟を決めたようにキチガイが言う。デブはなんと答えたらいいか、わからなかった。
「そうだ。スマホはどうなったかな」
デブはヒトデ男に見つからないような場所に干しておいた、スマホの電源を入れてみた。
「生き返ったぞ!」
大声をあげそうになったデブをキチガイが制する。充電はかろうじて残っているだけだったが、電波状態はよかった。
「やった。やった」
ふたりは狂喜乱舞した。
「ど、どこにかけよう」
とりあえずデブは履歴のいちばん上にあった番号に反射的にかけた。

 
あらすじ
呪われた町、代田橋。ここでは今日も怪奇現象が勃発していた。どうやら河童のような生き物が、赤堤沼から現れて、人間を襲って食っているらしい。『ラーメン珍長』のコックで殺人鬼の珍保長太郎は事件の解明に挑む!
登場人物
珍保長太郎:『ラーメン珍長』店主
バカ:新実大介
ヒルアンドン巡査長:安藤正義
弱虫探偵団
モヤシ:坪内文二
キチガイ:今金弓彦
デブ:田淵哲
モヤシの母:坪内伊佐子
モヤシの兄:坪内拓也
中学生:唐木政治
中学生の弟:唐木将紀
ウルトラ:門前正月
旦那:中島圭太
奥さん:中島ルル
娘:中島グミ、5歳
小犬:モップ
元プロレスラー:三船龍太郎
大家:生源寺荘子
セイブ愛地球:環境保護団体