空手対幽霊

〜薄くて黒い田中康司〜
時間は夜の十一時。田中は散歩に出ることにした。
「ザ・ミッドナイ〜ト。くふふ」
三流大学しか出てないが、田中は基本的にインテリだった。ただの散歩に出るにも、つい横文字が口をついて出てしま ...

空手対幽霊

〜この腐れ公安め〜
今日は鉄拳会館の練習の日である。鉄拳会館のような弱小の空手流派では、自前の道場を持つなんてことは、夢のまた夢だ。
鉄拳会館は武蔵野市北町にある、武蔵野市学習センターという施設の、第二集会室を借りて、 ...

空手対幽霊

〜空手地獄変〜
「こりゃあ、気味悪い家っスねえッ! 鉄玉郎さんッ!」
愚か者が集団でやってきた。すっとんきょうな声を上げたのは、ホストクラブで働いている、源氏名が如月星夜という、髪の長い軽薄な男。おどけている。自分を『 ...

空手対幽霊

〜カッター・ファック〜
男はふいに黙り動きを止めた。数十秒後にゆっくりと頭を上げ、緊張した面持ちで中空を睨む。
「ふう……」
突然、男の空気が変わった。なぜか男は改心したかのように、ため息をついた。今やっている ...

空手対幽霊

〜死出虫〜
何十年も手入れのされていない、荒れ果てた庭に、一番乗りしていたのは、クロシデムシの幼虫だった。林の中から、人間には聞こえない周波数を感じ、集まってきた。黒光りのする節のある腹を波立たせながら、早く死体の処理をしたい ...

空手対幽霊

〜完全なキチガイ〜
「ぎゃあああああぎゃあああああぎゃあああああああああああッ!」
男は絶望の叫び声を上げる女の、長い髪の毛を鷲掴みにし、元気よく引きずり起こした。べりッ! べりッ! という小気味良い音とともに、女の髪 ...