【怪奇小説】空手対幽霊〜肉太鼓〜

〜肉太鼓〜
ハァ〜、脂肪太鼓でェ〜、ドンドコドン!
気のせいか遠くから、祭り囃子が聞こえてきた。堀江も一緒に踊りたくなった。いや、ある意味では堀江は既に生殖ダンスを激しく踊っているともいえる。
クライマァ〜クスはヨォ〜、激しい腰っフリさァ〜。
裕恵はなぜか堀江のデブデブした身体に身を寄せてくる。それどころか、腰を——もっと率直に言うと女性器ッ!を、ぐりぐりと堀江の太ももに、押しつけてくるではないかッ!
女性器が当たっているッ!
仰天した堀江は大声で叫びそうになったッ!
嗚呼、男子の本懐ッ!
この女はやはり酔っぱらってヤリたくなっていたのだッ!
そうだ、その通りです。
前回の体験を思い出しましょう。
この濡れマン女は、つまり酔うとヤリたくなる女だったのですッ!
誰でもチンチンを入れていい女だったのでありますッ!
堀江は自問自答してそういう結論に辿り着き、さらにデブ太鼓は激しい怒濤破竹の連打を繰り広げた。
そうだッ!
乳を揉んでやろうッ!
腐れデブの癖に、生意気に堀江は、女の身体に手を伸した。むにゅっと、いきなり柔らかいものに手が触れて驚いた。裕恵はブラジャーをしてなかったのだ。
七十点ッ!
というか、これだけで完全に合格点ッ!
金メダルッ!
胸を触っていた手を、下半身に滑りこませる。
さらなる衝撃が待ち受けていたッ!
驚天動地ッ!
武蔵野台地の下で大平洋プレートが一気に八センチメートルも沈みこんだッ!
裕恵はいつの間にか、下はすっぽんぽんになっていた。
つるつるした尻の肉ッ!
ドン!
ドン!
ドンドコドーン!
日本民族の昔から続く祭り太鼓のビート。
夏祭りの夜に村の若者たちがするのは、種付けに決まっておるのだッ!
祭りじゃーッ!
今夜は二十九年に一度のデブ祭りじゃーッ!
肌がすべすべして気持ちがいいッ!
悦楽だッ!
未体験の法悦の世界だあッ!
乗りに乗っている堀江。いい気になって、発情したヨークシャー種の肉豚のように女の上にのしかかった。裕恵は逃げない。それどころか、ぎゅっと抱き締めてきた。
こんな豚なのに、かまわないのですかッ!
堀江は自分の幸福が信じられなかった。
獣姦が好きなんですかッ!
今が1975年で、これが『りぼん』の漫画の中なら、自分のホッペをつねって引きちぎり、痛いーッ!夢じゃなーい!と、だらだらと鮮血を滴らせながら、叫ぶところである。
ドンッ!
ドンッ!
ドンッ!
タタッ。
堀江はけっこう垂れている裕恵の乳を揉み、自分の母親以来ごぶさたしていた女の乳首を吸った。そんな歳ではないはずなのに乳首は経産婦のようだった。
コノボタン押スト、音ガ出ルヨ
堀江が幼児化した!
感じている……。
俺の指と舌で女が感じている……。
こりゃあ、百点満点いけるぞぅ!
夏祭りは大レイヴ大会だッ!
踊り狂え、若者どもッ!
腰を振り、ロックしてロールしろッ!
ドンッ!
ドンッドドーンコ!
はァ〜ッ、デブリデブリでェ〜デブ踊り〜ッ!
狂乱の盆踊り会場ッ!
ダイコン持って振り回し、スリサザラをかき鳴らす若者たちの群れッ!
絶好調の祭りのリズムに乗って、堀江は中央突破を試みたッ!
中央線笹子トンネルに真っ赤に燃えた蒸気機関車は、近付いて行ったッ!
堀江は自分の控えめなサイズのチンチンを握ってみると、それはスズメバチに刺された親指くらいの大きさに腫れていた。
よしッ!
いけるッ!
堀江は女の上にのしかかった。裕恵は濡れた股を広げてその瞬間を待った。
届かない。
がっかりした若者たちが、ため息をつきながらダイコンを投げ捨てて、口々に堀江を罵倒しながら帰り仕度を始めるのが見えた。腹の肉が邪魔で、あと十センチメートルという距離がどうしても届かなかった。
硬直して動かなくなった堀江の耳の中で、別な和太鼓が鳴り響くのが聞こえた。ただし、今度の太鼓の音色は、まったく心地よくなかった。中学校の時に、マラソンを走らされた時にも聞こえてきた不吉な太鼓の音だ。ドスンッドスンッとなにか巨大な重たいものに、全体重をかけられ踏まれているような感じだった。
堀江の肌は紫色になっていった。嫌な脂っこい汗が止めどもなく溢れ出て、幾重にも肉の襞の重なった首筋、女のように大きな胸、不潔な脇毛が密林のように繁茂した脇の下を伝って滴り落ちた。
堀江は、俺は臭くないだろうか。裕恵は『くっせえなッ! このデブッ!』などと、心の中で思ってるのではないだろうか……、と心配した。しかし、裕恵の顔を見るのは怖くてたまらなかった。その表情いかんによっては、見たとたん石になってしまうに違いない。豚石、またはデブ石と呼ばれる新種の鉱石が誕生してしまうだろう。
「口でしてあげる」
裕恵は驚くべき行動に出た。
奇跡ッ!
デブ村に奇跡が起きたのじゃッ!
村の長老も大はしゃぎで、百年ぶりに干涸びた茎をおっ勃てたッ!
裕恵はデブの股間に顔を埋めた。きっと、ひどい悪臭がしているに違いない。帰りかけた村人たちは、再びダイコンとスリサザラ、銭太鼓を手に狂乱の盆踊りを踊り狂ったッ!
あの世から一時帰国中の透明な先祖たちも、浮かれて舞を舞った。
現世も来世も前世もォ〜、地球の全生命がよォ〜、種の繁栄を謳歌する世界乱交盆踊りだよォ〜、ちょいなちょいなッ!
ドン!
ドン!
ドデスドン!
ドンドドーン!
紫色になっていた堀江は、今度は使いこんだペニスのように赤黒くなってきた。わかったことは、女の口は指より気持ち良いということだった。私はこの認識を一生忘れません。
堀江は全力でデブ太鼓を打ち鳴らした!
響け太鼓!
唄え牛の皮!
デブのビートで——堀江の心の中でしか聞こえないが——裕恵の頭の動きはさらに速くなった。デリヘル嬢のように、口で抜こうとしているのである。
ああッ!
これがッ!
愛しあうッ!
というッ!
ことなんだなァッ!
と堀江は思った。
鼠径部に熱いものが、盛り上がってきた。
来たッ!
来たッ!
来たーーーーーーーッ!
熱いッ!
俺は熱いぞッ!
ファイヤーッ!
ファイアーッ!
燃えろッ!
燃えるッ!
ああッ!
ああッ!
ああッ!
「ああッ! ブヒッ! ああッ! ブヒッ! ああッ!ブヒッ!」
堀江は豚のような大声で喘いだッ!
女を応援するために堀江は、さらに太鼓を力をこめて打ったッ!
乱れ打ちッ!
デブリデブリのぜい肉打ちッ!
打って打って打って打ちまくったッ!
ボンッ!
本当に破裂するような音がして、堀江の中の太鼓の皮が破れた。バチで叩くのを止めても、しばらくは惰性で鳴り続けていた。しかし、それもやがて静かになり、堀江の心臓は止まった。
女は股間から顔を上げて堀江を見た。射精にはいたらなかったので、AVのように女の口から精液が垂れているようなことはなかった。
トンカツの衣で頭が覆われるように、ぼやけて行く意識の中で堀江は、とうとう女の身体を使って一回も射精しないで一生が終わってしまうのか……、と思い、その点をつくづく悲しく感じた。
酸素供給はなくなったが、まだ生きている神経を伝わって、堀江の眼球に写っている画像が脳に送られてきた。画像の中の裕恵だったはずの女は、なぜか左右の頬の肉がえぐり取られたようになくなっていた。そのために、女の顔は笑っているように見えた。
堀江は次の言葉を言って息絶えた。
「ト……トンカツ……」


あらすじ
空手家の黒岩鉄玉郎は弟子と肝試しに廃屋に入る。そこで見つけたのは、女のミイラ。それは異常な変質者にレイプ殺人されてしまった女子大生だった。ところが黒岩鉄玉郎は、女ミイラを空手で粉砕する。激怒した女ミイラの悪霊は、彼らを呪い殺していく。空手対幽霊という物理的に不可能な戦いが始まった!
登場人物
黒岩鉄玉郎 : 空手家
如月星夜 : ホスト
田中康司 : 糞オタク
堀江 : デブ
結衣 : 風俗嬢
女子大生 : 被害者
青田寧男 : 新宿署刑事

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