【怪奇小説】空手対幽霊〜あなたも幸せになれる〜

12月 23, 2023

〜あなたも幸せになれる〜
さて、しごいて帰るか。
ここに長居しすぎた。
田中は自分を、いつもなにをやるにしても、最後は必ず失敗する人間だと考えていた。それを防ぐには、失敗する前に切り上げて帰れば良いのだ。これが田中が、失敗だらけの人生から学んだ教訓だった。
早く帰ると、確かにおいしいデザートを食うことはできない。しかし、欲張ると自分はメインディッシュを必ずひっくり返してしまうのだ。
いつもそうだった。そういう人間なのだから、仕方がない。だから前菜を食べただけで帰れば良い。そうすれば確実においしい前菜だけは味わえる。
自分が手に入れられる範囲だけの小さな幸せで満足することを、知るべきである。そうすれば、あなたも幸せになれるのです。
オチンチンをゆっくりとしごきながら、田中は女子高生の身体を観察した。ベッドの上で、大股を広げて下着だけでぐっすり眠っている。明かりは外から入る月の光だけ。おっぱいはCからDの中間くらい。
女の乳を揉んだことはないが、手にしたらちょうど収まるくらいの、程よい大きさではないか。やわらかそうな乳の谷間を見ながら、田中を擦る手の動きを速くした。
で……出そうだ。
証拠を残すのは良くない。出てきた精液は手の平で受けることにしよう。
さあ、出すぞッ!
ところで、乳首はどんな色だろうな。
今にも出そうになっていた手の動きを、田中は慌てて止めた。
くそッ!
ここで出せは、すぐに問題なく帰れたのにッ!
しかし、田中は乳首を見てから出したくなったッ!
ああ、犯罪が止まらないッ!
誰かお願いッ!
ボクを止めてッ!
ここまででも、じゅうぶんに犯罪ではある。しかし、それは実害のない、霧のようなもの、煙りのようなもの。誰にも迷惑をかけてないのだから、良いではないか。
単に部屋に流れこんできた空気のように、ボクは部屋に入り、射精はするが、それは手の平の中にである。あとになにを残すわけでもし。
それならば、そのまま立ち去ったならば、『なにも起きなかった』のと同じことではないか?
警察の法務部では別な意見であろうが、ボクの頭の中の法律では、まったくの無罪である。
ボク、無罪放免ッ!
情状酌量ッ!
恩情判決ッ!
しかし肌に触るとなれば話は別だ。田中の中の裁判官も、厳しくならざるを得ない。ここからは一線を越える。
一線の向こうはレイプだ。強姦。強制チンチン入れ入れ。そんな可哀想なことは、断じて犯罪であるッ!
『強姦をするようなケダモノは、去勢してから、ヒグマと戦わせて殺せば良いッ!』
田中は日頃からブログで、そう主張していた。田中はフェミニストだった。ネット上では、女性に人気があるゆえんである。いくら一生一度のチャンスだからといって、自分の中の法律は破りたくはなかった。
だが、しかし。
ボクの臭い玉袋の中の精子が言っているッ!
大声で涙を流しながら、切実に叫んでいるッ!
ボクの精子が、女子高生の乳首を見たいと言っておるのだッ!
本能でDNAッ!
それを人類の力で押しとどめることは、科学的に不可能である。
まして、一個人の力ではッ!
ボクが押しながされようとしている、その力によって人類は他のケダモノどもを差し置いて、地球上に増え広がったのだ。
母なる地球ッ!
ボクの股間の袋の中の二つの地球ッ!
地球の歴史規模の莫大な力が、ボクに女子高生のブラをめくらそうとしているのだッ!
いけないッ!
めくっては、いけないッ!
田中は葛藤した。舌を噛み切ってこのまま死んで、判断を保留できたならば、どんなに楽かと思ったほどだ。しかも、いやらしく良い具合に女子高生のブラは、サイズが大きめで緩かった。静かにめくれば、バレなさそうだった。
悪魔の誘惑なりッ!
ベットの横には勉強机があった。その上にあるのは、女子高生が飲んだらしい、水が少し入っているコップ。田中はその中に、精子を数匹泳がせてみたい欲望に瞬間的に駆られたが、それより注目すべきは、その横の薬の袋であった。精神科の処方せん。そこに睡眠薬の名前が書いてあることに気付いて、田中の目ががぜん輝いた。
キチガイ独特のぎらぎらした血走った目ッ!
どうやら、この女子高生はメンヘル女子高生だったのである。
睡眠薬を飲んで眠っているッ!
あまりの幸運と幸福の予感に、田中はおしっこをもらしそうになったッ!
もちろん、おしっこと精液を一度に噴出する、同時多発失禁であるッ!
どうりで、まったく目を覚まさないと思った……。
薬を飲んでッ!
緩いブラジャーとッ!
恥毛のはみ出したパンティーだけでッ!
寝ている女子高生ッ!
ああッ!
ああああッ!
いやらしいッ!
性犯罪のようにいやらしいッ!
性犯罪なのはお前だ、女子高生ッ!
被害者は、ボクですよッ!
こんな罪のない小市民を、無理矢理勃起させ、一線を越えさせようとするなんてッ!
はなはだ淫乱ですッ!
きわめて迷惑ですッ!
そんなにボクを犯罪者に仕立て上げたいのかッ!
マンコ女子高生ッ!
田中はブラジャーをめくった。
女子高生の乳首は、薄いピンク色だった。
法悦ッ!
法悦ッ!
チベット密教の僧侶の吹く長いトランペット、ギャリンが天上から鳴り響いた。処女と童貞の頭蓋骨を二つ使って作られるダーマル太鼓が、からから音を立てた。
ボクはネズミだ……。
白いか弱いハツカネズミ。
ところがこの乳首とマンコの毛丸出し女子高生の謀略により、ボクはどす黒い——赤黒い——ドブネズミに変化してしまった。
いきり立って、かちんこちんに硬くなっているぞ、ドブネズミ。
ちゅーと鳴く代わりに、どぴゅーと白いゲロを吐く。
ああッ!
ボク、赤黒ドブネズミ田中は、穴に入りたくてたまらない。
巣穴だ。
巣穴。
女子高生の股間の、顔に似合わず、もじゃもじゃしたジャングルのような茂みに覆われた巣穴ッ!
そこにずっぽりと入りこんで、白い体液を吐き出したい。
ああ、吐き出したいともッ!
吐き出したいともッ!
地球が滅びるとか、核戦争が起きるなどの重大な危機が、今訪れたとしても、ボクにはそれより、この穴に入ることがはるかに重大だッ!
入れさえできれば良いッ!
それだけが、我が人生の希望だッ!
入りたいッ!
入りたーいッ!
ああッ!
入りたいのですッ!
田中は正義と秩序を愛する人間だったが、今この瞬間は、自らの中に巣食う豹変した黒ネズミのパワーに、圧倒されていた……。
「ああッ! ボクはこの下着女子高生に、暴力を振るいたくてたまらないッ! この衝動をどうしたらいいんだッ!」
田中は無意識のうちに、小声でつぶやいていた。
「強姦だッ! オレは強姦がしたいんだッ!」


あらすじ
空手家の黒岩鉄玉郎は弟子と肝試しに廃屋に入る。そこで見つけたのは、女のミイラ。それは異常な変質者にレイプ殺人されてしまった女子大生だった。ところが黒岩鉄玉郎は、女ミイラを空手で粉砕する。激怒した女ミイラの悪霊は、彼らを呪い殺していく。空手対幽霊という物理的に不可能な戦いが始まった!
登場人物
黒岩鉄玉郎 : 空手家
如月星夜 : ホスト
田中康司 : 糞オタク
堀江 : デブ
結衣 : 風俗嬢
女子大生 : 被害者
青田寧男 : 新宿署刑事