【怪奇小説】空手対幽霊〜血の袋〜

12月 23, 2023

〜血の袋〜
そこに携帯電話がかかってきた。敬愛する鉄玉郎さんかと思って、如月が出ると馴染みの客の女だった。ホストクラブの早朝営業の前に、如月と食事をしようという誘いである。ちょうど良いので、如月は女をこの駐車場に呼んだ。それから少し考えて、馴染みの客をさらに二人呼び出した。
「ああ、ごりっぱですね……星夜」
やってきた常連客の一人、風俗嬢の三知子は如月の股間の強張りを見て、よだれを垂らした。三知子は風俗嬢としての盛りは過ぎた三十二歳。得意技はローション・フェラ。新大久保の人妻ヘルスに勤務している。身体は大柄、やせ形のスポーツ体型で色は浅黒い。
それから、少し遅れてやってきた人妻のみお、OLの玲子も如月の股間を見て仰天した。 如月は三知子の腰を掴んで、股間の強張りを押しつけた。短いワンピースの尻に、強張りの先端がめりこむ。如月は犬のように、股間を擦りつけた。
「あああああああああああああッ!」
たまらず三知子が喘ぎ声をあげる。卑しい枕ホストである如月はどんな客とも犬のように尻を振って交尾していた。だから如月は三知子の身体の上には、すでに何度も乗っていたのだが、今日の性欲は特別だった。まるでオナニーに開眼したばかりの中学生のように、女の身体を求めて止まらなかった。
「凄い……布の上から、アレが熱くなっているのが、はっきりわかるわ……。火傷をしそう……」
三知子は火照った顔で喘いだ。発情しているらしい。腰をタコのようにくねらせ、如月を誘った。如月はワンピースの布の上から、三知子の少し垂れはじめてきた乳房を、乱暴に鷲掴みにした。
「痛いッ!」
女の身体を知らない中学生のような如月の行動に、三知子が悲鳴を上げた。如月はかまわず背後から三知子の乳房を、引きちぎるように揉みしだいた。とても女に快感を与えようとする行動には見えなかった。むしろ、女に限り無い憎しみを持ち、復讐を遂げている強姦魔のようだった。
三知子は如月が与える苦痛に、身をよじって抗議していたが、決して本気で逃げ出そうとはしなかった。三知子の股間は、温水で満ち溢れていた。Mの気があったのである。
「ふーッ! ふーッ!」
如月は交尾中の卑しい動物のような声を上げた。下品で汚らしかった。
一応、枕営業中心とはいえホストなので、日頃の振る舞いは、それなりにエレガントだったのだが、そんな様子は微塵もなくなっていた。
店でこんな淫獣のような顔付きをしていたら、客は一人もよりつかなくなるだろう。豚のようだった。よだれを垂らさんばかりに……とはよく言うが、本当によだれを、だらだら垂らしていた。目付きもおかしい。狂人のようである。
如月は天狗のお面のようにいきり立ったズボンの前の膨らみを、いやがる三知子の尻にしつこく押しつけ続けた。ズボンを履いたままにもかかわらず、如月の強張りの先が三知子の中にめりこんだ。三知子の穴は緩かったのである。 その途端……。
ぶーーーッ!
という放屁のような音とともに、如月は大量に精液を射精した。音が聞こえるほど、大量に出たのである。
如月の劣等遺伝子しか含まれない人種的に劣った臭い精液は、尿道口→トランクス→スラックス→さらには三知子のパンツの布を越えて吹き出し、その勢いがあまりにも強かったため、信じ難いことに膣の中にまで土石流のように侵入した。
子宮口に熱い精液の波が当たるのを感じて、三知子はいろいろな意味で悲鳴を上げた。
発射をしても、天狗の鼻はまだ上を向いたままだった。
三知子の背後に立って腰を振っていた如月は、動物的な本能に導かれるまま、スラックスのチャックを開け精子に濡れて、てかてか光る逸物を取り出した。それから三知子のパンティーを下ろし、深々と突き立ててしまった。
危険な時期だったならば、妊娠してしまうところである。しかも、劣等な愚かな子孫しか生まれないに決まっている如月の種を……。
こんな男からは、五体満足な子供が生まれるわけがない。おそらく、目玉が一つしかないとか、首が二つあるとか、そういう将来は見せ物小屋に出るしか就職先がないような化けものが生まれるに違いない。そんな如月の餓鬼を孕んだら、人生終わりである。
「ひいいいいッ!」
三知子は絶望感から、大声を出した。しかし、股間はいよいよ三知子自身の出した、いやらしい粘液で溢れかえり、歯のない老婆のように濡れそぼっていた。
如月は入れてしまってから、あっ、しまった、ここで孕ませてしまったら、この女それを盾に馴れ馴れしくなるぞ、と思った。俺の女のような顔をしだすに違いない。
この腐れあま。
『できちゃった』なんて言って、やって来てみろ。
固い革靴の爪先で全力で子宮を蹴り上げてやる。
人力堕胎手術だ。げらげらげら。
それで一生、子供の生めない身体になってしまったら大笑いだな。
……などと、いろいろ如月らしいことを考えていたのだが、その下半身は動物の本能に支配され、.生殖機械のようにリズミカルに動いていた。
一度出したにもかかわらず、その股間の竿は硬度を失っていなかった。ノロマの炭化した肉体は、良い仕事をしていた。この点は誉めても良いと如月は思った。
店長の飯塚は目の前でAVのような『抜かずの二発』を見せつけられて、いつになく欲情していた。
好色な人間ではあるが、普段の飯塚は持ち前の気弱で臆病な性質から、性欲のために自ら進んで行動的に振る舞うことは、あまりない。
しかし、今日の飯塚はアクティブだった。歳を取り性衝動の衰えたラットのつがいの隣の檻に、若いラットのつがいを入れ、お盛んな性行為を見せると、刺激されて再び交尾の回数が増えると言う。それと同じようなものか。
背広を着た歌舞伎町のクマネズミ、店長の飯塚はノロマの黒焼きの山の中に、一気に手を入れた。普段の石橋を叩いても渡らない飯塚の性格からは、信じられない行動である。
中は生きているように熱かった。生きた人間の腹を裂き、その臓物の中に手を入れたような熱さだった。
すくいあげた手の平いっぱいの人肉の黒焼きを、飯塚は甘露のようにおいしそうに舐めた。まずかった。実に苦い。しかし、その強烈な苦さが、自分のしなびた睾丸や精巣に喝を入れ、元気にさせるような気がした。
飯塚はむさぼるように、残りの粉を口に入れ咀嚼した。一気に飲みこみたいところだったが、それでは喉に詰まること確実だったので、拷問のような苦味に耐えながら、少しづつ胃に送りこんだ。
ガソリンに点火されたように、胃の中が熱くなってきた。
「こりゃあ、効くわい」
飯塚は満足そうに呻いた。胃を中心に熱さが体中に広まる。もやもやとした、淫らな気持ちでいっぱいになってきた。
「もう、出そうだ」
スラックスの前は若々しくテントを張っていた。そこで、飯塚は如月が予備で呼んでいた女の一人、みおに声をかけた。声をかける前に精液をかけてしまいそうな勢いだった。
「入れさせてくれーッ!」
飯塚は、みおに抱きつき絶叫した。みおは四十過ぎの腹の出てきた人妻。頭と股間が緩く、誰にでも足を開く便器のような女だったが、そのみおが不快に思うくらい、飯塚の行動は直情的でいやらしかった。
「やだッ! 汚いッ!」
みおが珍しく拒んだ。飯塚の額が脂でべったりと濡れていて、気持ち悪かったのだ。
悲鳴を上げるみおにかまわず、飯塚はスカートの中に手を入れ、パンツを引きずり下ろした。高いパンツだったが、ゴムがべろべろに伸びてしまった。
飯塚はズボンを下ろした。逸物は天を向き、腹につきそうになっていた。こんなにいきり立っているのは、何十年ぶりだろう。
「こりゃあ、確かにビンビンだッ!」
飯塚は叫んで、みおに挿入した。
店長の飯塚と如月の奮闘ぶりを見て、赤石も刺激されていた。
本当は欠けた鼻の先が痛くてたまらなかったのだが、急いで病院に行きたいという気持ちより、とりあえず女の穴の中で一回射精したいッ!
という下半身の都合の方が、勝ってしまったのである。
性欲のマジックである。
赤石も焼きノロマ粉を飲みこみ、残っていた女、玲子に声をかけた。
玲子は腋臭の臭い貧相なOL。ホストたちは影で『虫』『エイリアン』『グレイ』などと玲子のことを呼んでいた。客として来てるのでなければ、間違っても会話をし、人類代表としてコミュニケーションを取りたい……などとは決して思わないような最低の女だった。
しかし、黒焼きをキメた今夜の赤石の目には、玲子は観音様のように見えた。赤石は玲子の濡れ観音に、除夜の鐘を突く撞木のように性器を突き立てた。
玲子は割れた鐘のような耳障りな鳴き声を出して、赤石に応えた。
動物か……。
異星人か……。
玲子の腋臭は赤石の先のない鼻が曲がるほどだった。でも赤石はまったく気にならなかった。
「こりゃあ効きますなあ、店長」
三知子と犬の格好で交わりながら、如月が話しかけた。
「こんなに元気なのは数十年ぶりだッ! 青春時代が甦ったようだッ!」
加齢臭に満ちあふれた臭い脂汗で額をてからせながら、飯塚が元気に答えた。
今日は硬かった。
最近では入れた時は硬くとも、ピストンを繰り返すうちにどんどん元気を失い、途中でできなくなることが多かった。
若い頃のようには、種がないのである。水漏れのするプールのようなもので、いつまで経っても満杯になることはない。溜まってないのだから、無理に放出する必要もないので、柔らかくなって当然なのである。
指でしごいても、耳掻き一杯ほどの分量しか出ない。股間はぴくぴくと射精感があるのに、なにも出ないこともある。空気でも出ているのか、と飯塚は考えていた。
それがどうだ。
今日は鋼鉄のようだ。
勇ましいッ!
腹は出ているが色白でメロンのようなおっぱいの頭の弱い人妻に、思うがままに分身を突き立て、よがらせているッ!
気弱な飯塚は、いつになく自信に満ちあふれていた。
「うっ!」
屠殺される豚のような咆哮を上げて、飯塚はみおの膣の中に射精した。避妊するという概念自体がまったく頭に浮かばなかった。
これは、慎重な飯塚の人生では異例なことだった。すべてはノロマの黒焼きのせいだった。まるで黒焼きに操られているようだ。
中に出されてしまったみおは、さきほどから白目を向いたまま動かなくなっていた。快楽の限度を越えてしまったのだ。このまま、正常には戻らないかも知れない。
飯塚ははだけたワンピースから、こぼれ出ているみおの巨大な乳房を鷲掴みにし、乳首をべろべろ舐めた。ニンニク臭い飯塚の臭い唾液で、みおの乳房も臭くなった。
みおは四十を過ぎていたが、子供を産んだことがないせいか、乳首の色は薄くきれいだった。身体はぽっちゃりした安産型。妊娠しやすい体質なので、気をつけている。
これで妊娠してしまったかも知れない。
責任を取らないために、あと数回、中で出してから首を絞めて殺してやろう、と飯塚は決めた。その後で、このおっぱい女も黒焼きにして食ってしまえばいい……。
巨乳の黒焼きは、また違った素晴らしい効き目があるのではないか。
飯塚はそれがとても良い考えのように思えた。
「良い考えだと?」
ふと、飯塚は如月のような鬼畜と同じ思考回路に、自分がなっていることに気がつき、身の毛がよだった。
おかしい……。
これは、いつもの自分ではない……。
しかし、そんなためらいを遮るように、飯塚の股間はさらに硬度を増した。
もともと、深く考えるたちではない飯塚は、あっさり思考を停止し、獣の本能に導かれるまま、二度目の射精をするために、動かないみおの股間に硬い自分自身を挿入した。
死姦みたいで、気持ち良かった。ここ数十年なかった幸せな気分に、飯塚はなっていた。
如月のオチンチンは細かった。長さは人並みよりあったので使用に問題はなかった。
しかし、問題は三知子のマンコが緩かったことにある。緩くても女性側としては問題はないらしく、如月が入れると三知子はいつも立続けにイッていた。だが、如月はなかなかイケない。
それを三知子は『タフ』だと誤解していたので、仕事上は都合良かったのだが、入れていても気持ちが良くないというのは、やはり不満足なものだった。
ところがである。今日の三知子のマンコはよく締まっていたッ!
きついッ!
トンネルが狭いッ!
濡れていないからではない。三知子の下の口は、水を飲み過ぎた痴呆の老人のようによだれを垂らしていた。
もしかして、アナルに入れてしまったのではないか?
それなら汚いなと如月は思い、二人の結合部分を見た。
「うおっ」
如月は驚いた。きついはずである。如月のペニスは膨張して、オオウナギのようになっていた。
「お……俺、人類か?」
太さは手首ほど。相手がマンコの緩い三知子でなかったならば、裂けて大怪我をしているところだった。今日だけは三知子はマンコが緩いことを感謝すべきである。
しかも、オオウナギは見ている間にも、さらに太さを増しているようだった。
「すげえ効き目だな……」
如月は初めて恐ろしさを感じだ。痛くなってきたのである。鈍痛。
如月はここは無理してでも、女を何回も楽しませなくてはならない、と判断した時は、一晩で六発くらいは出す。楽しいわけがない。仕事である。
そんな時に、こういう嫌な鈍痛が茎の中心から、沸き上がってくる。当たり前である。人間は六発も射精するようには、身体の構造ができていないのだ。おそらく、膨張する血の袋に他ならないペニスの内部が、伸びきってひび割れたような状態になっているのであろう。
しかし、今回はそれどころの騒ぎではないッ!
水面下六千メートルの深海のような圧力で、男根に血液が集中しているのである。脳いっ血で倒れる寸前の人の頭って、こういう感じがするのだろうか……と如月は考えた。だが鈍い痛みにもかかわらず、如月の性欲は止まるすべを知らなかった。性欲機械のようだった。
止めたくとも、止められずッ!
精子を出したいッ!
何度でも出したいッ!
この女のオマンコの穴に、まだ何回も出したいッ!
如月の下半身は、そう大声で喚き散らしていた。下半身は別な人格だった。
「痛いッ!」
いくら穴のでかい三知子でも、とうとう悲鳴を上げた。如月のものが、人類の受け入れられる物理的なサイズの限界を越えたのだ。見てみるとその大きさは、優に四十センチは越えていた。
さすがの好きものな三知子でも恐ろしくなり、如月を止めようとした。如月は鬼畜ではあったが、Sではなかったので、すぐに止めてくれると思ったのだが……。
三知子の制止の声を聞くと、如月は興奮した表情になり、さらに強い力で三知子にしがみついた。
そして、犬のように激しく腰を振ったッ!
「マンコが裂けたッ!」
生暖かい液体が、股間から溢れてくるのを、三知子は感じた。
如月の目を見て、三知子は恐怖に引き攣った。確実に狂人の目だった。真っ赤に充血し、赤い涙をぽたぽたと流していた。
涙を流したいのは、こっちの方だッ!
と三知子は叫びたくなった。
如月にはもう人間の理性は感じられなかった。野獣に犯されている、と三知子は思った。
私は犯し殺されているッ!
「気持ち良い……すごく気持ち良い……」
下になっている女が、生命の危険を感じているにもかかわらず、如月は自分の茎の先端の感触のことしか頭になかった。
人種的に劣った血統の愚鈍な顔。白痴の声。如月はいやらしい声で、ささやき続けた。実に醜い。
しかし、本人は自分がセクシーな表情をしている、と誤解をしていた。
三知子は吐き気がした。おそらく、端正な顔の下に隠されていた如月の本性の姿が、醜い表情となって現れているのであろう。
ゲス。
人間のクズ。
最低なウジ虫。
如月という人間は、この三語ですべて語ることができた。
「痛いからもう止めてッ!」
三知子は如月の顔を殴った。如月はその細い手首を捕まえ、あっさりへし折った。
「ぎゃああああああああああああああああああッ!」
性交だったものが、虐殺に変わろうとしていた。
「ぐおおおあああああッ!」
店長の飯塚の方からも、瀕死の豚のような悲鳴が聞こえた。如月が見てみると、飯塚に挿入されているみおの弛んだ腹が、バルーンのように膨らんでいた。
「寄生虫か?」
なぜか如月は、アニサキスで体腔内がいっぱいに膨れ上がった、イカを連想した。
ボスン!
風船にホースで水を入れて、破裂させたような音を立てて、みおの腹が爆発した。色の白いみおの身体が、血しぶきで赤く染まった。
腹の裂け目から、長いヒモのようなものが飛び出していた。みおの腸だった。腸はまだ、ひくひくと元気良く動いていたが、みお本人は元気ではなく、すでに死んでいた。
腹の裂け目から、消火栓のような赤黒いものが突き出していた。店長の飯塚は、それが自分の性器であることに気がついて呆然とした。もっともな話である。
ぶぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼッ!
次の瞬間、爆音を立てて、飯塚の股間の消火栓の口から消火液のように、精液が吹き出した。
如月はそれを見て、口からゲロを噴水のように吹き出した。ゲロと精液の夢の共演である。
三流ホストクラブ『江戸男』の今夜の賄いは、おぞましいことに海鮮丼だった。インド洋からはるばるやってきた冷凍ビンチョウマグロ、東シナ海から来た冷凍スルメイカ、チリ産の養殖タイセイヨウサケも、もちろん冷凍、その他、得体の知れない深海魚、そして甘酒のように熟れた御飯粒が、三知子の顔面に降り注いだ。
ゲロの顔射である。
しかし、三知子は声一つ上げなかった。
如月は少し前から、亀の頭に摩擦を感じないことに気がついていた。見てみると、三知子の臍のあたりに大穴が開いていて、そこから自慢のオオウナギが、顔をひょこひょこ出していた。人殺しの最中でなければ、可愛いと思ったところである。
「どうりで、ぬちゃぬちゃすると思った」
如月はとっくに三知子の膣を突き破り、はらわたとファックしていたのである。如月の知能指数の低い頭にも、時間差でゆっくりと今の状況が飲みこめてきた。
如月はもう一度、三知子の顔面に海鮮丼の具を吐いた。今度も三知子は無言のままだった。
続いて、赤石の逸物も玲子の虫のような腹を引き裂いて飛び出した。血が緑色ではなかったのは意外だった。
血の袋。
店長の飯塚、如月、赤石の今のペニスの状態が、それだった。
「ほんの少しでも傷がついたら、俺のオチンチンは破裂するぞ……」
店長の飯塚は泣きそうな顔で言った。飯塚は、いきり立ち過ぎている自分のシンボルを見て思った。
この性欲はなんだ?
ビンビンにも程があるッ!
誰が俺を猟奇殺人犯にしてくれと頼んだッ?
飯塚は自分をこんなにした、黒焼きの素のノロマを激しく呪った。如月を呪う方が妥当だと思うのだが、そこは、ほれ、気弱な店長である。無意識に気の強そうな如月より、無抵抗な——粉だし——ノロマを選んだのである。今さらながら、情けない男である。
「俺は最初からあんな暗いやつを雇うのは、いやだったんだ。ひとめで俺の要注意人物アンテナに、ぴぴっと来た。全身から不幸のオーラが出ていたからな。貧乏神が、背中にがっしりと、しがみついてる様子が、目に見えるようだった。しかし、人手不足だったのだ。頭は鈍そうだったが、背は高く顔も悪くはなかったからな」
飯塚は朗々と愚痴りはじめた。人間は窮地に陥ると気を落ち着かせるために、自分の得意なことを始めるという。大地震で地下室に閉じこめられた男が、いきなりオナニーを始めた例があるとか……。飯塚が得意なのは愚痴だった。
「危惧した通り、ノロマはまったく役に立たなかった。だから如月がちょいとノロマをシメてやるのも、他の店員への見せしめにもなり良いだろうと黙認したのだが……。ああッ! なんだ、なんだッ! どこで俺の人生間違ったのだ、お母さんッ! なんで、俺は腹の裂けた女とセックスに耽っているのだッ! 時間はどうやって元に戻したらいいんですか、お母さんッ? たったそれだけのことで、俺は救われるのですよッ!」
店長の飯塚は、死んだ母のことを思い出し、むせび泣いた。今の自分の置かれた境遇を思うと、悲しくてたまらなかった。
「この責任は……」
飯塚は警察に逮捕された場合の、法的責任のありかを考えてみた。
「やはり、責任者は俺になるんだろうなあ。死者は何人だ?」
飯塚は改めて駐車場内を見回した。腹が裂け、心臓の動いていない女が三人いた。
店のお得意さんたちだ。どれも金の払いのいいバカな女たち。気の良い飯塚は彼女たちのことが嫌いではなかった。
それが今では、みんな内臓をぶちまけて死んでいる。
ここは戦場か。
しかも、俺たちはその死体とまだセックスを続けている。止められないのだ。
赤い靴か。
「女たちとノロマを合わせて、死人が四人……。死刑だろうか?」
飯塚は腰を振りながら考えてみたが、良くわからなかった。
「これは……、覚醒剤で錯乱して殺人を犯すのと同じ扱いになるのではないか? 心神喪失なら無罪か……?」
しかし、覚醒剤で殺人をした者の判決を考えてみると、どうも無罪になるよりは、単に殺人の上に覚醒剤の罪が上乗せさせられるだけのような気がしてきた。
「うへ……ウッ! ウッ! ウッ!」
吐きそうになった飯塚だったが、また射精した。もはや、快感とはなにも関係はなかった。機械のように薄い白い液を出すだけ。
頭の中に、ニンニク絞り器で睾丸を挟まれ、精子を絞り出されているイメージが浮かんだ。痛々しい私。
それなのに、犬のように腰を振り続けることを止められないのだ。地獄のようだ。
しかし、まだ、射精したりない。
「俺はもっと出したいのだッ!」
飯塚は絶叫した。飯塚の温和な目に一瞬、狂気の光が宿った。
「狂えたらどんなにいいものか……」
しかし、飯塚はまったくの平常心だった。オマンコが止められないだけ。
飯塚は腹の穴からオチンチンが飛び出していては、摩擦が足りないことに気がついた。
そこで、一度そのオオウナギのようなものを穴から引っこめ、コースを変えて心臓のあたりを目指して、突き立てた。
「心臓ファック」
店長の飯塚の頭の中に、いまだかつて人類が思いついたことのない言葉が浮かんだ。
「こんな言葉を思いつくような日は、できれば来てほしくなかったな……」
飯塚はしみじみとつぶやいた。腰は小刻みに動かしていたが。
飯塚の棍棒のようなオオウナギで、みおのあばら骨が折れた。
「鉄のように硬いからな」
飯塚は無感動に言った。感情が平坦になってきた。
「ちょっと、気が狂ってきたかな?」
飯塚はそう思い、期待からにっこり微笑んだ。冷静にそう判断するあたり、まだまだ正常のようである。
みおの左の巨乳のあたりが盛り上がってきた。色白の巨乳は、たっぷんたっぷんと揺れていたが、今のこの状況ではまったく色気はなかった。その胸元に、さらに巨大化しているオオウナギが、新たな裂け目を作った。穴から、飯塚のオオウナギが顔を出した。
そのおちょぼ口には、みおの心臓がくわえられていた。
「ぐはあッ!」
さすがの飯塚も悲鳴をあげた。血圧が一気に上昇し、飯塚の巨大なペニスが音を立てて破裂した。特に面白い音ではなかった。
続いて赤石のペニスも破裂した。飯塚と赤石の鼠蹊部から大量の血が吹き出した。赤い水たまりが駐車場に2つできた。
阿鼻叫喚。
「うるさいな」
如月が振り向いて見ると、店長の飯塚の性器が破裂したところだった。一時に大量の血液が失われたことにより、飯塚の顔色は見る見る間に青黒くなった。
如月と飯塚の目があった。走馬灯のように一生を振り返っている最中だろうか、と如月は考え、その飯塚の心中を想像すると面白くなり笑った。如月は人間が死ぬ瞬間に興味があったのだ。
その笑みを、飯塚は、死ぬ間際になって心が通いあったと誤解して、穏やかな気分であの世に旅立った。
もちろん、如月のような人間が同情をするわけがない。毛虫に火をつけたり、アリの頭を切断してそのまま歩かせたりした時のような喜びを、死に際の飯塚を見て感じただけだ。
確かに店長の飯塚には、ずいぶんとお世話になった。気に入られて、可愛がってもらった。ホモかと疑ったくらいだった。如月はありがたいと常々感謝していた。この男は自分の役に立つからだ。
しかし、もちろん芸能界入りした暁には、店長には口を閉じてもらわなくては……、と如月は考えていた。余計なことを知りすぎているからである。
東京湾に沈んでもらって、一生口を閉じてもらうのが一番良い。
だが、余計なことを言わないならば、命だけは助けてやっても良い。俺は温情派なのだ。どうだ、やさしいだろう。
その時は、寅屋で羊羹でもお土産に買って、挨拶に行ってやろう。この男の命を取るかどうかは、その時の態度で決める。抜き打ちの『命テスト』だ。
合格かどうかは、俺が判断する。
つまり、俺は神と言うことだ。
俺様が有名なテレビタレントになるという、偉大な夢の実現のためには、店長の命がなくなる程度のことは仕方があるまい。俺以外の他人の命は、少しも価値がないからな。
如月はどうやって疑われないように飯塚を殺害し、逃走したら良いかを、細かく計画していた。これも芸能界入り計画の一環だった。如月はそういう空想をするのが好きだった。心優しい空想好きな少年だったのだ。
しかし、今夜。
それらすべてが、無駄に終わりそうな展開になっている……。
「このままでは芸能界入りの前に、地獄入りになるぞッ!」
如月は腹の裂けた三知子と死姦をしながら絶叫した。俺のペニスも張り裂ける寸前だが、心も張り裂けそうだ。腰を振るのが止まらない。
あの世に向かってシェイク!
シェイク!
シェイク!
くそ、実に嫌な気分だ。
夢を追う一途な俺のじゃまをするのか?
天の上の誰かさんよ。
「考えろッ! 今必要なのは、なにかッ? 俺はそこらの一般人とは違うッ! 別格ッ! 別格でスペシャル! このまま、死んで終わる運命であるわけがないッ! 類い稀な高い知能を生かして、いかにして生き延びたら良いか考えるのだッ!」
高い知能というのは間違っているが、如月が一人だけ無傷で生き残るという卑怯な技に、高いスキルを持っていることは確かだった。いますね、こういうやつ。
「勇気ッ! そうかッ! 勇気が必要だッ!」
如月は答えを見つけた。しかし、これは困った。如月のような卑怯さが身上の人間に勇気があるわけがない。勇気がひとかけらでもあったら、こんな人格に育つわけがないのだ。
俺……死ぬの?
もしかして、俺、死んじゃうの?
如月は、自分が成功しないで終わる可能性があることに、生まれて初めて思い至った。確実に有名な芸能人になると思っていたのだ。
それを前提に生きてきた。
最悪、すべてが裏目に出た場合でも、深夜放送のB級タレントくらいにはなれると思っていた。
自分が成功しないという考えは衝撃的だった。
情けない。
悲しい。
虚しい。
如月は胸が裂けそうになった。絶望のあまり、秋葉原の交差点に車で突っこみ、通行人を次々とナイフで刺したいような気持ちになった。この状態では、それができないことが残念でならなかった……。
俺のような著名人がこの世の悪意によって、葬り去られようとしているのだッ!
それくらいの、復讐にあうのは当然なのだッ!
悪いのはお前ら、全員だッ!
如月はどす黒い怒りで燃えたぎった。
この世に、どでかい仕返しをしてやる前に、死ぬわけにはいかないのだぁッ!
「むんッ!」
如月は怒りをバネにふんばり、腰の動きを止めた。意外と簡単だった。
あとは、このまま抜いて、勃起が収まるのを待って、着替えて帰ればいいだけなのだ。転がってる死体や警察対策をどうするかなどは、その次の段階の問題だ。
今できることを、一歩一歩確実にやればいいのだ。それが成功の秘訣だ。ビジネス書に書いてあった。
「1、2、3」
如月は三秒間我慢した。よし、できるぞ。唐突に春の嵐のように激しい希望が湧いてきて、如月は一気にペニスを抜こうとした。
パコパコパコパコッ!
なぜか、如月は止める前の何倍もの速さで、逸物を三知子の死体に突き立てていた。
「こ……これは射精の前の動きではないかッ? もしイッたら、確実に精液ではないものが、噴出するに違いないッ!」
如月の肛門と性器の中間のあたり、蟻の戸渡りと呼ばれる部分に、快感が高まってきた。射精に至る前兆だ。
この快感が亀の頭まで達した時、俺は確実に死ぬッ!
「俺はもう死んでいるッ!」
如月は日本語としては前代未聞な、非論理的なことを叫んだ。
俺の命あと何秒だッ?
1……2……3……。
如月は自分の命のカウントダウンを始めた。思い出は走馬灯のようには、甦らなかった。忙しかったのだ。


あらすじ
空手家の黒岩鉄玉郎は弟子と肝試しに廃屋に入る。そこで見つけたのは、女のミイラ。それは異常な変質者にレイプ殺人されてしまった女子大生だった。ところが黒岩鉄玉郎は、女ミイラを空手で粉砕する。激怒した女ミイラの悪霊は、彼らを呪い殺していく。空手対幽霊という物理的に不可能な戦いが始まった!
登場人物
黒岩鉄玉郎 : 空手家
如月星夜 : ホスト
田中康司 : 糞オタク
堀江 : デブ
結衣 : 風俗嬢
女子大生 : 被害者
青田寧男 : 新宿署刑事