空手対幽霊

〜薄くて黒い田中康司〜
時間は夜の十一時。田中は散歩に出ることにした。
「ザ・ミッドナイ〜ト。くふふ」
三流大学しか出てないが、田中は基本的にインテリだった。ただの散歩に出るにも、つい横文字が口をついて出てしま ...

空手対幽霊

〜ボクの青春、腐ってる〜
次に気がついた時、田中は自分の部屋でコンピューターに向かって仕事をしていた。さすがに田中は驚いた。
「記憶が飛ぶというやつか」
激しい試合をする格闘家には、たまにある症状だった。本人は ...

空手対幽霊

〜血の制裁〜
その日の鉄玉郎の道場では、血の制裁が行われた。主に狙われたのは、門下生のメガネオタクで、自称ウェブ・クリエーターの田中康司だった。
顔に汚らしいぶつぶつがいっぱいある男だ。そのいくつかからは、いつも膿が吹 ...

空手対幽霊

〜この腐れ公安め〜
今日は鉄拳会館の練習の日である。鉄拳会館のような弱小の空手流派では、自前の道場を持つなんてことは、夢のまた夢だ。
鉄拳会館は武蔵野市北町にある、武蔵野市学習センターという施設の、第二集会室を借りて、 ...

空手対幽霊

〜地獄の炎が見えるか〜
絶叫した結衣は、アイマスクを取り、男の顔を見た。
どうして知っているの?
結衣の心の中は疑問符でいっぱいになった。なぜか男には、結衣の心の中の声が聞こえるようだった。男は返答した。 ...

空手対幽霊

〜女子高生のひき肉〜
結衣が成績の悪い女子高生だった頃——十年後にまだ制服を着ているとは思わなかったが——よく一緒に遊んでいたのが、ミサエという女だった。
ミサエはバカだった。結衣も負けじとバカだった。バカはバカを磁石 ...

空手対幽霊

〜モヘンジョダロ〜
イメクラの控え室で、鉄拳会館門下生である結衣は、煎餅をばりばり食いながら、低俗なレディスコミックを読み耽っていた。どろどろとした嫁姑もの。風俗嬢はなぜか嫁姑ものが好きだ。
控え室は六畳ほどの部屋で、 ...

空手対幽霊

〜兄さん、背中が燃えているぜ〜
男の姿は特に印象に残るものではなかった。一見、歌舞伎町によくいる酔客の一人にしか見えない。泥酔しているわけではなく、足取りはしっかりしている。もしこの男をまじまじと見たりする者がいたら、その人は ...

空手対幽霊

〜我ら昆虫〜
シデムシの幼虫は驚愕した。荒れ放題のじめじめと湿った庭から、毎日の巡回コースの餌場である廃屋の部屋の中に入ると、硬くて歯が立たなかったほ乳類の巨大な乾燥肉が、粉々に粉砕されているではないか。これは親が子供に食べや ...

空手対幽霊

〜肉太鼓〜
ハァ〜、脂肪太鼓でェ〜、ドンドコドン!
気のせいか遠くから、祭り囃子が聞こえてきた。堀江も一緒に踊りたくなった。いや、ある意味では堀江は既に生殖ダンスを激しく踊っているともいえる。
クライマァ〜クス ...