空手対幽霊

〜兄さん、背中が燃えているぜ〜
男の姿は特に印象に残るものではなかった。一見、歌舞伎町によくいる酔客の一人にしか見えない。泥酔しているわけではなく、足取りはしっかりしている。もしこの男をまじまじと見たりする者がいたら、その人は ...

空手対幽霊

〜肉太鼓〜
ハァ〜、脂肪太鼓でェ〜、ドンドコドン!
気のせいか遠くから、祭り囃子が聞こえてきた。堀江も一緒に踊りたくなった。いや、ある意味では堀江は既に生殖ダンスを激しく踊っているともいえる。
クライマァ〜クス ...

空手対幽霊

〜人権だから死ね〜
「情けない……」
何度思い返しても情けなかった。悲しみに胸が張り裂けそうになり、堀江はトランクスの端から顔をだしているチンチンを握りしめた。硬くなってきた。
情けないが、この時の回想以上のオ ...

空手対幽霊

〜パンツに大便のついた女〜
午後11時45分、パンツに大便のついた女は堀江の部屋にやってきて、パンツを脱いだ。もちろん、ウンコの臭いがした。堀江もエビチリソースで顔がべたべたしてるんだから、二人で風呂に入って——豚のくせに風呂 ...

空手対幽霊

〜修羅場の忘年会〜
あれはバイト先の飲み会だった。去年の忘年会。堀江はレンタルDVDの店で働いていた。
デブというものは体臭が臭いし、そこに存在しているだけで不愉快になる。それは仕方がない。デブはデブだ。しかし、この職 ...

空手対幽霊

〜笑うミイラ〜
敵中横断三千里ッ!
彼らは日本人らしく勇ましく愚かな閧の声を上げながら、広い陰気な庭を駆け抜け、玄関のドアの前に来た。厚そうな樫の木のドアだった。今なら、このドアを作るとなると、けっこうな値段になるに違 ...

空手対幽霊

〜空手地獄変〜
「こりゃあ、気味悪い家っスねえッ! 鉄玉郎さんッ!」
愚か者が集団でやってきた。すっとんきょうな声を上げたのは、ホストクラブで働いている、源氏名が如月星夜という、髪の長い軽薄な男。おどけている。自分を『 ...

空手対幽霊

〜カッター・ファック〜
男はふいに黙り動きを止めた。数十秒後にゆっくりと頭を上げ、緊張した面持ちで中空を睨む。
「ふう……」
突然、男の空気が変わった。なぜか男は改心したかのように、ため息をついた。今やっている ...

空手対幽霊

〜死出虫〜
何十年も手入れのされていない、荒れ果てた庭に、一番乗りしていたのは、クロシデムシの幼虫だった。林の中から、人間には聞こえない周波数を感じ、集まってきた。黒光りのする節のある腹を波立たせながら、早く死体の処理をしたい ...

空手対幽霊

〜完全なキチガイ〜
「ぎゃあああああぎゃあああああぎゃあああああああああああッ!」
男は絶望の叫び声を上げる女の、長い髪の毛を鷲掴みにし、元気よく引きずり起こした。べりッ! べりッ! という小気味良い音とともに、女の髪 ...